航空自衛隊小松基地強化について

石川県平和委員会事務局次長

小松基地爆音訴訟連絡会幹事

柴原和美

1.はじめに

小松市にある「小松基地」は、1961年に開設された日本海側唯一の戦闘機部隊が所在する航空自衛隊の基地です。現在は、3つの飛行隊(303飛行隊、306飛行隊、飛行教導群)に、約50機の主力のF-15戦闘機が配備されています。また、それ以外に、U-125A救難捜索機やUH-60J救難ヘリコプターを運用する小松救難隊、小松空港を離発着する民間機を含む管制業務を行う小松管制隊等があります。

 また、小松基地は、日米地位協定第2条4(b)により「米軍が期間を限って使用できる施設」となっており、小松基地を使っての日米共同訓練実施の根拠となっています。

 小松基地のF-15戦闘機は、主に、佐渡島西方から鳥取県沖の日本海に広がるG空域と呼ばれる訓練空域(海抜0m~上空制限なし)で訓練を実施しています。国内13ある訓練空域の中で、このG空域は最大の広さと言われています。


2.小松基地強化

その1  新たな「部隊」の配置

 これまで、小松基地に所属する戦闘機部隊は2つでしたが、航空自衛隊の戦闘機部隊配置の改編で、今年6月に、宮崎県の新田原基地から航空戦術教導団(司令部は横田基地)隷下の「飛行教導群」が小松基地へ移動しました。これによりF-15戦闘機8機、T-4練習機2機の合計10機が増加しました。

 飛行教導群は、緊急発進を含む戦闘任務には付かず、主として次の3つの任務を担っています。①戦技・戦法を調査・研究する ②実戦経験のない戦闘機部隊等に、より実戦に近い戦況を体験させるために敵役を演じる ③飛行訓練後に、空中戦の内容に対して的確な戦訓を導き出す

 飛行教導群の小松基地への移動に関して防衛省は、「戦闘機の性能や武器の能力は大きく発展している。それらに対応する戦闘技術の調査・研究するために、広い訓練空域を抱える小松基地が最適と判断された」「(飛行教導群は)非戦闘部隊であり、基地強化ではない」と説明しています。しかし、これまで小松基地には無かった機能を新たに持つことになり、基地機能強化に他なりません。


その2  新たな「えん体」設置

 これまでは、小松市街地側に格納庫や駐機場が集中していました。しかし、加賀市側に新たに指揮施設とえん体(戦闘機を入れるシェルター)を整備し今年2月から運用を開始しました。新しいえん体は、上空からの攻撃にも対応できるカマボコ型で、千歳基地や三沢基地、米軍の嘉手納基地等と同様のものです。303飛行隊が新しいえん体地区に移っています。


その3  新たな「弾薬庫」設置

 小松基地には、これまで弾薬庫が一カ所設けられていました。新たに加賀市側に弾薬庫が設置されました。この弾薬庫は、小学校・保育園から約230メートルの位置にあり、従来の弾薬庫と併せて収容能力は最大3トンであると防衛省は認めています。

 小学校・保育園から230メートルという新しい弾薬庫は、火薬類取締法の基準はクリアしていますが、事故の際に身体的には守られたとしても、児童・園児の精神的傷害が危惧されます。子どもたちの安全を軽視するものと言わざるを得ません。


その4  F-15戦闘機の「近代化」

 配備開始から30年余り経過するF-15戦闘機の能力向上が課題となっています。そのために、保有する約200機のF-15戦闘機の能力向上近代化改修が順次進められています。その主な内容は次のとおりです。

・射撃管制レーダーを新しいものに交換

探知距離が延びる

電波妨害への対処能力が向上する

射程の長いミサイルの搭載が可能になる

・セントラルコンピューターを交換

・射程距離100km程度と言われる国産ミサイルを運用できるようにする

 ・通信システムの電波妨害対処を強化する

・戦術データ交換システム端末を搭載

中核となるコンピュータを介して味方や目標の位置を知ることができる

レーダーや探知装置で探知した情報等を中核となるコンピュータを通じて共有できる

他の爆撃機等への目標指示で地上攻撃にも応用される

地上に配備されているミサイル部隊への目標指示、攻撃指令を出すことができる

情報の一元管理によって、目標の重複といった無駄を省き有効な戦術に活用できる

米軍や同盟国の軍隊と情報を共有できるようになる

・ヘルメット装着ディスプレイによる短距離ミサイルの非砲口照準発射能力を付加する

 正面から大きくはずれた位置にある目標に対して、機体を目標に対して正面にあわせなくても照準をあわ

せることができる

・統合電子戦システム(レーダー警戒・電波妨害・チャフ・フレア射出装置)を搭載

   自機を狙ってくるミサイルを警戒する

  向かってくるミサイルの目標を誤らせる

 近代化改修済みのF-15戦闘機は、小松基地をはじめ千歳基地、那覇基地で配備が確認されています。


その5  救難捜索機や救難ヘリコプターの「装備品」等

 小松基地に配備されているU-125A救難捜索機やUH-60J救難ヘリコプターにも変化が見られます。小松基地に配備されているU-125A救難捜索機には、敵のレーダーやミサイルを警戒する装置が搭載されています。また、2機の内の1機は、上空からは海の色に同化し下方からは空の色に同化することで視認されにくくするために、今年5月頃から濃い2種類の青色で塗装(洋上迷彩)されています。

UH-60J救難ヘリコプターも、洋上迷彩に塗装され、空中給油機から給油を受けるための管(プローブ)、レーダー警戒受信機、ミサイル警報装置、向かってくるミサイルをかく乱させるチャフ・フレア射出装置を装備しています。また、5.56mm機銃の装備も始まっているとの情報もあります。


その6  戦闘機や救難捜索機、救難ヘリコプターの日米共同訓練参加

 小松基地での日米共同訓練は、1982年から始まりました。2003年からは、海外で行われる共同訓練にも参加するようになっています。

2009年にアラスカで実施された軍事演習に参加した小松基地のF-15戦闘機が、米空軍のB52戦略爆撃機を護衛する訓練を実施したことが明らかになりました。敵国領内に入り込み地上の目標を攻撃することを任務とするB52戦略爆撃機を敵の戦闘機から守ることは、「日本の防衛」とは無縁の「集団的自衛権」行使と言える行為です。

その後も、アラスカやグアムでの共同訓練に、小松基地からの参加は続いています。

 2014年には、米軍空中給油機による救難ヘリコプターへの空中給油訓練が実施されました。また、救難ヘリコプターと米軍救難ヘリコプターが一緒に救難訓練も実施しています。2016年にグアムで行われた日米豪共同訓練には、U-125A救難捜索機が参加しています。

 救難隊というと、山や海での遭難者や災害地での負傷者の救助をイメージしますが、救難捜索機や救難ヘリコプターの装備や塗装の変化は、むしろ戦闘地域での運用を想定していると考えざるを得ません。


3.まとめ

 自衛隊に関わる情報は、「防衛上の機密」のため入手が困難ですが、空港利用時や監視行動等で断片的には得ることができます。また、その断片的な情報を、全国の平和委員会等の人たちと共有・分析することで、より正確で本質的なものに近づくことができるようなります。ここで紹介した情報は、まだまだ断片的ではありますが、様々な情報を付き合わせた中で得られたものです。

 その中で言えることは、私たち国民の見えないところで、着実に安保法制の(場合によっては更にその先を見据えた)具体化を進めていることです。だからこそ、その変化や情報を発信し警鐘を鳴らしていくことが重要だと私たちは考えています。