自治体が生きる、わたしたちの「地方創生」

           いしかわ自治研「地方創生調査」事務局 堀井 三吉

 

>各自治体の「地方創生計画」調査について

いま、人口ビジョンや地方版の総合戦略づくりが急ピッチで進められ、地方創生交付金による事業の推進が行われています。人口政策をどう考えるのか、わたしたちの「地方創生」にするために自治体はどうしたらよいのか。そんな問題意識をもって、石川県内各自治体の「創生計画」を検証するため今回の調査を行っています。

5月16日現在、県内19自治体のうち、12自治体からアンケートの回答がありました。各自治体御担当の皆様には、年度当初のお忙しい折、ご協力いただき厚く御礼申し上げます。

 引き続き、各自治体を訪問し、アンケートの記載内容についてご説明をいただく聞き取り調査を行っていくこととしています。重ねて、各自治体各御担当の皆様のご協力よろしくお願い申し上げます。

 

2060年の人口予測

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」(20121月推計)によると、2010年の日本の総人口は12,806万人(高齢化率23.0%)から、2048年には1億人を下回り、2060年には8,674万人(高齢化率39.9%)になると推計しています。

人口推計

  

また、石川県の総人口は、2010年の1169千人から、2060年には789千人まで減少すると見込まれています(2010年比▲33%)。

2060年推計で、県内19市町のうち増加が見込まれるのは、川北町135.5%と野々市市108.5%の2自治体です。他の自治体は全て減少します。

加賀地域では、加賀市▲51.3%、小松市▲35.0%、白山市▲27.0%、金沢市でも▲25.0%となっています。

 能登地域では、能登町▲76.5%、珠洲市▲74.6%、穴水町▲69.2%、輪島市▲68.6%、宝達志水町▲60.8%、志賀町▲60.5%、など羽咋地域以北の自治体は、中能登町▲41.6%を除き全ての市町で1/41/2以下の人口になることが予想されています。

 

>人口政策を考える視点

こうした急激な人口減少社会化で地域は大きな転換期を迎え、対応がせまられていることは確かです。これにどう対処したらいいのか・・・。これに対する視点について、20159月号自治体問題研究所の「住民と自治」誌において、神野直彦東京大学名誉教授は次のように方向性を示されていますので、その抜粋をあらためて紹介します。

 

「人間は人口ではない。人間を没個性的に把握する人口(population)という言葉は、重商主義が生み出した言葉である。人口が政策目標とされる時には、人間を目的とする社会ではなく、人間を手段とする社会が目指されていることを忘れてはならない。つまり、人間を労働や兵力の担い手としてのみ認識されるようになると、人間は人口になってしまうのである。

日本では人口政策といえば、フランスに範を求める。私がフランスに調査に訪れた際、日本で人口政策と呼んでいる政策の担当者は、「あなた方が人口政策と呼んでいる政策は、貧困対策である」と明言していた。しかも、その担当者は女性だったけれども、「私が子供を生むか生まないかに、政府が介入することなどありえない」と断言していたのである。」

(中略)

「政府の政策は、社会を形成して営まれている人間の生活に合わせて打ち出されなければならない。ところが人間を人口と見做し、人間を砂のような存在と位置付けた瞬間に、事態は転倒する。つまり、政府の政策に合わせて、人間の生活を営むように求められてしまうのである。

効率化の名のもとに政策コストを低めるために、地域社会の絆を打ち砕いて砂のようにした人間を、地方拠点に集めて「人口のダム」を創り出そうとする。しかし、砂のようになった人間を集めてダムを創ってみたところで、それはすぐに決壊をする。そもそも人間の絆を形成しながら、地域社会で営まれている生活を維持するように政策が打ち出されていれば、地域社会が抜け殻のようになることはないのである。」

(以下略)

 

真の「地方創生」を願うすべての人々と共有したい視点です。